育児と大人の人生 その1 

月刊誌の仕事を一緒にしている編集者さんに第一子が生まれた。
彼も40歳、奥さんは41歳での初産である。
この5年ほど、一緒に仕事をし、よく私の子どもの話をした。
私は基本的に子どもがいると、人生が豊かになるということを
話していたと思う。
「子どもがいるっていうのも、いいものなのかもな」
と思ってもらえたのかもしれない。
「子どもは最大の荷物」といった同級生がいたが、
荷物でも背負わなきゃ、人生が暇すぎてしまうし、
足腰も鍛えられないだろうと思ってしまう。


そんなことを書いたら、見知らぬ人からコメントいただいた。
「子供を一人でも産もうものなら、人生の様々な運や時間、
金、神経を子供に費やさないと、育児放棄で逮捕される時代です。
誰のための人生なのか、わからなくなります。
子供は存在自体、大人の人生を破壊する金食い虫でもあり、
様々な意味で悪魔とも言えます」
と書かれてあった。
曰く、その方は性格がいびつで、女性との交際歴もほとんどない
44歳の独身男性であるという。
私はどう返答しようか迷った。
「絶対にいい人が現れますよ」とか、「子どもをもったらわかる」とか、
そういう身も蓋もないことは間違っても言えない。
考えた末に答えたのはこうだ。
「私の場合、たいした趣味もなく、自分がこれをしなければ生きて
いけないといったこともなく、食べ物は着るものはなんでもよく、
ひとりでずっと生きていくのはつまらない性分なので、
結婚して子供を育てるというのが合っていたのかもしれません。
子どもなんて、大きくなったら金だけかかって相手にしてくれなくなる存在
(自分が「悪魔」だったからよくわかる)。
子どもが巣立ってもあと20年は生きられてしまう長寿社会ですから、
いまから自由な時間ができたら何をしようかと楽しみにしています」
なんでもやる前は不安になる。
いまでも仕事の依頼があると、自分にできるだろうかと不安にかられる。
だが、やっていくうちに、「なんとかなる」と思えてくる。
(その2へつづく)