「グリーンゾーン」

マット・デイモン主演、ポール・グリーングラス監督という、
「ボーン・アイデンティティ」シリーズで2,3作をつくったコンビが
「グリーンゾーン」でも三度タッグを組んだ。
イラク大量破壊兵器を探す一軍人が、そのデマ情報の元をさぐって
いくという筋の映画である。
ひとりの勇敢なアメリカ兵が自分の国の暗部に迫っていくというのは
映画的にはおもしろいんだけど、その動機面が薄い。
アメリカ兵が自分の国の暗部に迫るということは、
正義に対する強い使命感か、実は自国に対する恨みか、スパイであるとか、
そういうバックボーンがないと、行動に出られないと思う。
でも、主人公は「知りたいんだ」としか言わない。
上官にくってかかるシーンでも、そのバックボーンが見えないと
ただの短気な奴になってしまうのである。
ボーンシリーズに比べて、人物の描き方が浅かった。
人並みはずれた行動をするとき、その人の心の底にはそうした行動を
起こさざるをえない、体験をもとにした強い信念がある。
どんな物語もそこは外せない。
そこが丁寧に描かれていたら、もっとこの映画は
深みあるものになったと思うのに残念だ。