「平成狸合戦ぽんぽこ」

多摩地区に住んでいるものとして、
一度は見ておかねばなるまいと、
ジブリ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」をちゃんと見た。
こんなに多摩丘陵の開発に批判的な映画とは思わなかった。
大手不動産会社とか、大手住宅メーカーは、
この映画のスポンサーには到底なれないだろう。
ここまで宅地開発を正面切って批判している作品はない。
いまもって、多摩丘陵の開発は終わっていない。
わずかに残った雑木林もどんどん宅地になっている。
毎日、朝のラッシュが酷いというのに、
マンションも乱立し、どんどん沿線人口も増える。
この映画を見て、多摩丘陵がいまどうなっているか関心を
もった人は、グーグルマップで、衛星写真を見てほしい。
「ああ、ここにあった山は、住宅になり、ゴルフ場になったのだな」
とだいたい見当がつくと思う。
緑が多いのはいいなと思う人もいれば、
虫がいっぱい飛んでくるし、落ち葉がうっとおしいから
緑なんかいらないという人もいるだろう。
後者は開発にOKというだろうし、前者も心情的にはそうであっても、
仕事として会社から命令されれば、仕事を進めるしかない。
そうなると、ほとんどの人が開発にGOということになる。
これは誰にも止められない。
ナショナルトラストで土地を買うしかない。
そんなことは不可能だ。
新しく住宅地を開発しなくても、多摩ニュータウンには空き家が
いっぱいあって、人口は減っているのにね。
新しい住宅地には同じような世代ばかりが入居し、
数十年後に一様に高齢化し、活力がなくなって、
新しく若い世代が入ってこなくなっている。
大都市部郊外のいわゆるニュータウンでそうなっている地域は多い。
その教訓がまったく生かされていない。
雑木林を切って、新しく住宅団地をつくる発想はもう古い。
大手不動産会社や大手住宅メーカーは、大規模案件ばかり追うのでは
なく、既存のものをいかに生かすかを考えたほうがいいのではないか。
映画の最後に狸の化かしで、はげ山に緑を生やすシーンを見ながら、
自宅周辺の緑が失われる状況を思って、ちょっと涙が出た。