「おかしな敬語」について

8月24日の記事、「おかしな敬語」の内容について。
「おかしくないのでは?」という指摘をもらったので、
もう少し意図するところを説明しますね。


私が「販売させていただきます」に違和感をもったのは、
テレビのインタビューに店員さんが答えていた場面だった。
いや、正確には「販売を中止させていただいております」だったか。
これはね、たとえば、マック行って何かの理由で販売しなくなって
お客を目の前にして「販売を中止させていただいております」は
正しいと思うんですよ。敬意を払う人が明確だから。
でもテレビのインタビューで答える場合は、不特定多数の人に
対していうわけだから、単に「販売を中止しております」で
いいのですよ。
これは本の記述でも同じこと。
たとえば、筆者が「ある社長がこんなことをおっしゃっていて、
非常に感銘を受けた」というとき、「おっしゃる」は必要ない。
読むのは読者であって、筆者が社長を尊敬しているかどうかは
関係ないからだ(皇族に対しては別の考え方がある)。
単に「ある社長がこんなことを言っていて」でよい。
ただし、読者に対しては「お楽しみいただけたでしょうか?」
と尊敬語を使ってもいい。なにしろお客さんなのですからね。


今日もテレビのアナウンサーがおかしなことをいっていた。
野球中継で、「さあ、抑えの岩瀬が出て参りました」ときた。
「参る」は謙譲語で、他人の行動に対しては使わない。
「弊社の上司」に対しても使わない。
「弊社の部長が申していたことなのですが・・・」とお客さんに
言ってしまいがちだが、私は違和感を持つ。
部長を勝手にへりくだらせる必要はないと思う。
謙譲語は自分が自らへりくだるときに使うものだから、
自分の言動が基本のはずだ。
だから、「一緒に参りましょう」もダメ。
他人も一緒にへりくだらせてはダメだからだ。


敬語は単に使えばいいのではなくて、気持がないといけない。
「こういうときはこういう」とシステマチックに使うのではなく、
その都度、自分の頭で考えて使いたいものです。