出版業界というものは

2週間のインターン生の実習が終わった。
最後の日、ゼミの担任教授が訪れてくださり、お礼を述べてくださった。
その先生が気になることをいう。
だいたいこんな内容。


出版業界はものをつくる点がいい。
自分で企画したものをつくれるのはそうそうない。
その他の企業でも企画する人はいるが、いい企画を出しても
「おじさん重役」たちが反対して、だいたい角が取れて
とんがっていたものも丸くなり、つまらなくなる。
その点、出版業界は同じ傾向はあるにしても、
担当編集者の権限は大きいような気がする。
だから学生の人気も高い。


私は出版業界というのは、お金や契約の面で、よく言えばおおらか、
悪く言えば大雑把なところがあるところだと思っているけれど、
その他のことについては、その他の内需型産業と対して変わらない
と思っていた。
ところが、「出版業界はやりがいがある」というのだ。
出版業界でも社内会議を経るころには、「おじさん重役」たちに
角を削られてしまうことはよくある。
でも、よくいわれるこういうことってのは、
「おじさんがいうから説得力をもつ」ことのひとつだと思う。
若いのが、「おじさん重役に角をとられる」なんていってみても、
そんなのは言い訳にしかすぎない。
中堅に属する私のようなものからすると、
これを百害あって一利なしと断じるのはいかがかと思う。
日本の悪しき商習慣としてよくいわれる「稟議書」も意味なく回って
いるわけではない。理由があって社内を回っている。
「おじさん重役」たちにもそうしなければならない力学が働いている。
重役たちは大所高所から見ているし、失敗の責任を取らなければ
いけない(取らない人もいるが)という役割を負っている。
おいそれと下から上がってきたものを通すわけにはいかないのだ。
それに、重役らを説得することができなければ、
問屋や販売店を説得することもできまい。
出版業界を「クリエイティブな職業だから」という理由で
選ばないほうがよい。
みんなが「そうでない」と思いこんでいる営業や事務の仕事だって、
やりようによってはクリエイティブになる。
職種がクリエイティブなのではなく、目の前の仕事をクリエイティブな
ものにすることだ。自分でクリエイティブにするのだ。
そして、本が好きなら、ぜひ出版業界に飛び込んできてほしいと思う。