自分の頭で考える

いま出版業界は未曾有の危機である。
もともと右肩下がりの状況に加え、起爆剤と期待されていた
電子書籍市場もまったく勃興する様子なし。
長期的に見ても、人口減少トレンドでは需要が増える要素がない。
そこへきてこの地震である。
もうみな意気消沈というか、覇気がなくなっている。
どの編集者に会っても元気がなく、苦虫を噛み潰したような顔で
「弊社の窮状」を語るのである。
ほとんど意欲的に仕事をやる雰囲気がないから、
考えることもやめてしまっているように見える。
人は成果が出ない状態がずっと続くと、やる気を失う。
考えても無駄だと思い始め、考えるのをやめ、過去の経験とか、
業界の慣例に沿って物事を進めるだけになってしまう。
「この本が売れなかったから、こういう系統の本は
いまは企画が通らない」といったりする。
売れなかった原因を自分の頭で考えもせず、
「こういうのはいまは売れないんだ」で終わってしまう。
ほんの少し売れたら売れたで、
「やっぱり著者のネームバリューがあるからね」で片付けてしまう。
売れた本をつくった社員に対して、「がんばったな。お前のつくった
構成がよかったんじゃないか」といえる上司がどれだけいるだろう。
これは自戒を込めていうのだが、
なぜ売れないか、なぜ売れたか、もっと自分の頭で
考えてみる必要がありはしないか。
業界でよく言われているようなことに照らしてみて、
「たぶん、こういうことで売れなかったんだろう」で終わらせていないか。
考えることをやめるなら、出版業界にいてはいけない。
自分にそう言い聞かせている。