日本版スクリブドは発展するか

7月30日付け読売新聞には米国での電子書籍の話題が掲載されている。
スクリブドというサイトでは、誰でも自由に文書での作品を売ることが
できるというのである。
ある作家は「15ドルの本で1.1ドルの印税を得ていたが、
スクリブドでは2ドルの報酬が得られるので収益は大きい」
といっている。
3ドルから5ドルぐらいで売られているものが多く、
8割が著者の収入、2割がスクリブドの収益となる。
というのも、印刷、流通などのコストが省けるからであるが、
とはいえ、これには米国特有の事情もある。
米国ではすでにアマゾンがキンドルという、電子書籍専用の機器を
発売しており、これがipodより売れているという。
日本では電子書籍専用の機器が売れなかった背景がある。
ソニーパナソニックが参入したがいずれも撤退した。
米国のキンドルはやや大型なので、日本人好みの小型化された
電子書籍が読める機器が登場すれば普及するだろう。
機器の普及が、電子書籍普及のカギなのだが、
すでに日本でも携帯電話やiphoneでも読めるようになっている。
来年以降、スクリブドは国外でも展開するとしており、
まず間違いなく日本にも上陸する。
数年後にはグーグルか、アマゾンが買収するなどして
規模が大きくなれば、ビジネスとしてインパクトが出てくる。
これが進むと作家はフリーの編集者を雇って、独自に出版できる。
在庫を抱えるリスクもないし、価格を自由に決められ、タイトルも
好きにつけられる。これは書き手にとっては非常に魅力的だ。
音楽業界ではすでにこうした現象が起こっていて、
以前は「メジャーデビュー」としてCDを全国的に出すことが
ひとつのステップアップの段階だったが、アマチュアアーティストたちが
すでに「1ダウンロードいくら」で売り出している。
これなら自主制作でCDをつくり、借金を抱え込む必要もない。
私たちのように活字で表現をするものにとって、
これは願ってもない、渡りに舟の大チャンスである。
いま私たちは出版社と一緒に仕事をするが、今後は読者に直接作品を
届けることができるようになるわけだ。
これまでは企画段階で潰れていた企画も世に出せるようになる。
印刷コストや、在庫をかかえるリスクがなくなるのだから、
採算ベースも大幅に引き下げられるため、「山椒は小粒でぴりりと辛い」
テーマの本ができそうである。
ともかく環境はできつつあるということである。
そのときに向けていまから動き出しても決して遅いことはない。