黒澤明がいっていた。
「酔っ払いの演技は、飲めない人のほうがうまい。
酔っ払った人をシラフで観察してるんだな」
私も酔っ払いの真似は相当うまいと思う。
先日も５０代後半の男性ふたりと３人で飲んだ。
Ａ氏が私に人生訓を語ってくれた。
Ａ氏はそういうところがあって、感動する、ためになる
話もたくさん持っている。飲みに行くのが楽しみな方だ。
かなり酔いがまわっているからだと思うのだが、
そのときのＡ氏の話は、まったく意味がわからなかった。
その話を聞いたＡ氏の友人のＢ氏が
「お前、いいこと言うなあ」
といたく感心していた。
私はただ、ポカーンとした。
「おれも年だ。ヤキがまわったかな」とＡ氏は言うのだが、
それはもちろん意味がわからない話をしてしまったことに
対してではなく、「説教くさい話をしてしまった」ことに
対してであった。
どう反応していいいか、こういうときが一番困る。
酒飲みは酒を飲まない人と飲んでも楽しくないのが
わかるような気がする。
酔っ払いは酔っ払いを相手にしてこそ楽しい酒になるのだ。
