アグロフォレストリーの可能性

NHK1月3日放送
「アマゾンを救う“森”づくり 〜アグロフォレストリーに挑む日系人
という番組を見ました。
かつてブラジルに渡って農業で成功を収めようとした日本人が
たくさんいました。
ブラジルではある時期、そうした日本人や現地人がコショウを植えて
大変もうけて、コショウ御殿を建てた人もあったといいます。
しかし、コショウの木が病害虫におかされるようになり、
たちまちコショウ農園は苦境に立たされます。
そこで彼らは新しい農地を、森林を焼き払うことによって
得るようになります。しかし、そこでも病害虫が蔓延。
そのようにしてどんどん森が切り開かれていきました。
そんな反省に立って、いまかつて入職した日本人たちが
アグロフォレストリーに熱心に取り組んでいるというのです。
アグロフォレストリーとは、アグリカルチャー(農業)と
フォレストリー(林業)を組み合わせた造語。
木材となる木を植え、その木が育つまでココナッツやバナナの木を
育てて現金収入を得るというものです。
植物には日当たりのよい場所を好むものと、
日陰を好むものがあります。
最初は日当たりのよい場所を好む木を植え、その木が育ったら
その木の葉が影になるような場所に、日陰を好む植物を植える
というものです。
ココナッツは何十年も実をつけ、最終的に木材として売ることができる。
プランテーションでは病害虫に弱かったり、何かの気候変動があると
軒並み不作となってしまうが、複数の作物を植えることでそのリスクを
軽減できます。
植物同士が養分を奪い合ってしまうように見えるが、
最初は競争に強い植物が養分を奪っても、
あとになって落葉という形で別の植物に還元してくれる。
土壌では微生物や虫たちがせっせと落葉を分解し、
化学肥料を施さなくてもココナッツやバナナがちゃんと実をつける。
農薬を散布しないから、天敵も登場し、病害虫に犯されることも少なくなり、
無農薬の安全な農作物が取れる。
こういったことは、森林インストラクターの勉強をしている人には
すんなりと理解できる内容だと思います。


そういう番組の内容を見ていて、どこかで聞いた話だと思った。
以前ブログで紹介した『奇跡のリンゴ』の木村さんの話とまったく同じだ。
彼が無農薬のリングを完成させたのは、自然の生態系を利用し、
豊かな土壌をつくったことによる。
アグロフォレストリーはこれに林業の概念を追加したもので、
森林を保全しながら、農業で自立する道が開かれる。
未開の部族はどうやらこういうことを知っていて、似たようなことを
やっていたらしいが、最近になってアマゾンの違法伐採が話題になると
アグロフォレストリーは古くて新しい概念として
注目されるようになってきたというわけだ。
これは日本でも応用可能な、とても示唆に富んだ話だと思う。
「自然の生態系に学べ」
そうすれば、環境問題、食糧問題、エネルギー問題などが
一挙に解決するかもしれない。
日本の里山では似たようなことが行われていたのかもしれない。
燃料は山から取り、作物を畑でつくり、木材を売って現金収入を得る。
私たちはついつい農業と林業を分けて考えてしまいがちだが、
融合させることで、農業、林業を同時に行いながら生活をする
ということが現実味を帯びてくると思う。
アグロフォレストリーについて、もっと調べてみようと思う。