休耕地を復活して米づくり

ETV特集「よみがえれ里山の米作り〜小さな米屋と農家の大きな挑戦〜」
というNHKの番組を見ました。
入口さんというお米屋さんの女主人と、そのお米屋さんと取引のある
稲作農家の、休耕地を再生しようという取組みを取材した番組です。
古川さんという福島県の稲作農家の方が登場します。
独自の漢方農法を実践し、休耕地での稲作に挑戦しています。
条件のよい田はたくさんあるのに、あえて自宅から離れた地で、
しかも陽があまり当たらないところで米をつくろうとします。
素晴らしい水と土があるから、といいます。
地元の人に「中にいる人はわからない。私は外から来たから、
ここの良さがわかるんです」と語る。
「イライラするとよい米ができないような気がして・・・」とも。
なぜ困難な休耕地で米づくりをするのかについては、
「いままでと同じことをやっていては、消費者に飽きられてしまう」
というのです。自分の仕事を振り返り、ハッとしました。
この方の言っていることには非常に含蓄があります。
自然と対峙し、ときには寄り添い、対話してきたこそのものがあります。
古川さんが無農薬にこだわるのは、
自身が農薬で体を壊したのがきっかけでした。
無農薬なので、雑草がはびこることもある。
時間をかけて自分の手でひっこぬきます。
機械が入り込めない箇所には昔の道具を引っ張り出して使います。
どの時間帯に、どれくらいの水を、どの程度の温度で田に入れるかを考え、
微妙に調節し、きめ細かな管理を行います。
農業というのは、本当にクリエイティブな仕事です。
結局、新たに始めた休耕地での収量は微々たるものでした。
しかし、味は納得できるもののようでした。
農業を生業とする人の誇りと矜持と、凄みを感じました。


日本全体を見渡せば、これから人口減になっていくわけだし、
米の消費量も増えるとは思えない。
棚田など管理に手のかかる(コストのかかる)田から休耕地になっていく
わけだが、相応の対価が支払われれば米づくりは成り立つ。
つまり、おいしい米ができれば「ブランド米」として、
高く売ることができるというわけだ。
休耕地であっても源流水があるなど周囲の環境がよければ、
よい味の米をつくることができ、高値で売れる。
事実、入口さんのお店では通常の2、3倍の値段で米を売っている。
「付加価値をつければ、価格競争に巻き込まれない」からだという。
今後、中国など海外にブランド米を売るということが、
さらに盛んになるだろう。そうすれば農業にも国際競争力が出てくる。
一方で、今後、休耕地をどのようにするかは
農業の問題、治山治水の面、環境の面からして区別する必要が出てくる。
休耕地をそのまま放置し、森林に戻していくのも一つの手だろう。
豊かな水、土が得られ、付加価値のある米がつくれるのなら
田に戻すのも一つの選択肢だ。
また、治山治水の面から見て災害に強い森にする考え方もあれば、
都会の人たちが癒されるようなビオトープをつくるなどの方法も
考えられる。
今後は農業、林業を複合的に考えた国土設計が必要だ。
考えさせられることの多い、良質の番組だった。