『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』

週刊現代などでコラムを書いている町山智浩さんの著作。
まあよくぞここまで調べ上げたというほど、
アメリカに関するネガティブ情報が満載の本である。
私も含めて日本人はアメリカが大好きなせいもあってか、
この本、かなり売れているようだ。
私たちがイメージするアメリカ人は、ハリウッドやウォール街で働く
イケてる人たちであって、それ以外のアメリカ人のことはよく知らない。
「それ以外のアメリカ人」についてこの本にはよく書かれてある。
普通のアメリカ人がどんなふうであるか、著者自身が現地に暮らして
いるからこそわかることが書かれてあって、おもしろい。
自分の身の回りで起こったこととか、周りにいるアメリカ人について
書いてもおもしろいものができそうな気がする。


印象に残ったのは、「実用化された電気自動車はなぜ消えた?」の項。
話は、アメリカの自動車メーカーでは電気自動車が実用化レベルに
あったのだが、政府が石油企業と癒着していたために、
ガソリンが売れなくなると思った企業が政府にかけあい、
政府が企業の開発を握りつぶしたという映画について書いている。
ありそうな話ではある。
でも映画は「電気自動車を潰したのは誰か?」という犯人探しで、
「バカでかい車を愛し、歩いていける距離でも車に乗る普通のアメリカ人」
であるといっているというのである。
つまり、1人ひとりの消費行動が世の中をよくも悪くもすると。


こういう映画をつくれるというのは、アメリカは言論の自由というものが
日本の比ではないほど進んでいるのだと感じさせる。
それがよくも悪くもあるのだけど、やっぱりアメリカは「自由」を
大事にする国なのだ。
いまはアメリカをバッシングする本が売れる。
金融工学を用いてアメリカ追従してきた日本が
アメリカ信仰から抜け出す冷や水としては、
ちょうどよい一冊ではないかな。