新しい段階

世界経済はいま大きな転換期に来ているとぼくは思っている。
これまでの資本経済と、それが行き過ぎた市場原理主義の反省から
ポスト資本主義の試みがなされようとしている。
大銀行や世界的企業は大きすぎてつぶせないため、
公的資金が注入されたり、公的整理が行われた上での再建を
目指すケースが出てきている。場合によっては政府が株を持つなどし、
政府保有の企業になるケースも出てくる。
「大きすぎてつぶせない」理論は、90年代後半の山一證券破綻より
あとの話で、大手銀行に公的資金が注入されるということが
行われるようになった。
というのも、グローバル化で企業がM&Aを繰り返し、巨大企業が
相次いで誕生したことから「大きすぎてつぶせない」理論が生まれた。
おそらく成熟産業は今後もM&Aが続き、巨大企業が生まれる。
ひとたびこうした巨大企業が経営不振に陥ると、赤字も巨額になる。
そうなると、大きすぎてつぶせなくなり、公的整理が行われたり、
政府資金が注入されたりする。
政府が多くの株をもつということは、
「半分国営会社」になることを意味する。
社会主義共産主義の匂いがする。
一方で、アメリカでは国民皆保険を生み出そうとしている。
日本でも公共事業ではなく、社会保障で富の再配分をしようとしている。
これも社会主義共産主義の匂いがする。


一般的に、
経済のあらゆる規制を緩和するほど市場原理に委ねることになり、
逆に、
経済のあらゆる規制を強化するほど社会主義に近くなる。
サブプライムローン問題、リーマン・ショックに端を発する世界不況の
反省として、前者から後者に転換しようとしている。
いや、単純な転換ではなく、新しい経済の仕組み、構造づくりの
壮大な実験を始めようとする端緒についたというべきか。


そんな中で日本は世界的な経済の流れに沿って、
規制強化に踏み切る場面が多くなるだろう。
民主党を中心とする与党は、「官僚主義を打破する」というが、
規制強化しようとすればするほど官僚の権力は増大し、
官僚主義の打破が難しくなる。
官僚主義の打破」と「規制強化」の両立は並大抵のことではできまい。
新しい時代がどうはじまっていくのか、よく見ておきたい。