ディープ・ブルー

サメが人を襲うパニック映画のほうじゃないほうの映画です。
英BBCがものすごい手間隙をかけて撮った映像が盛りだくさん。
シャチがアザラシやクジラの子を襲うシーンや、イルカや鳥が
イワシを食べるシーンなど、見たこともない映像ばかりです。
なにせ200日かかっても5分しか撮れなかったというほど、
撮影クルーが手間隙をかけたというのだから凄みがある。
根底にあるのは、生と死であります。
海の中では、植物プランクトンに始まり、クジラやシャチなど大型動物
などによって最終的に捕食されるまでの生態系が成り立っている。
そこには自分が生き延び、種を保存するという明確な目的がある。
ドイツの哲学者、アルトゥル・ショーペンハウアーは、
「世界の本質は生きんとする盲目の意志である」といったが、
海の中もまさにその通りであることがわかる。
海の生物も陸の生物と同じ、自分が繁殖できる条件がうまくはまれば、
大量増殖できる。こうした条件をニッチという。
ニッチを見つけられた種は繁栄できるが、そうでない種は絶滅する。
天敵が現れたり、環境に適応できない種は絶滅するのだ。
だから、食べたり食べられたりすることは、残酷でもなんでもなく、
必要な自然の営みというしかない。
そういう視点で見ると、食べたり食べられたりすることは、
なんと素晴らしい出来事であろうか! と思う。
ともあれ、うわー、いっぱいいる! とか、うわー、でかい! という
見方でも十分に楽しめる映画なのです。
こういう取材はたのしいだろうなあと思いました。