トマトの共存とタンポポの競争

自然の営みに感動した話をしましょう。
遺伝子研究の権威である、筑波大学名誉教授の村上和雄先生が
自著のなかでこんな話をしています。
つくば万博のとき、村上先生は一本のトマトの木から、
1万5000個近い実をつけさせることに成功しました。
遺伝子操作をしたからだろうって?
そうじゃありません。
単なる水耕栽培で育てただけです。
つまり、トマトにはそれほどの潜在能力があるということです。
土に植えられたから、その成長要因が阻害されているのかというと
それも違います。
トマト自身が土に生えるという与えられた生態系の中で、
適正な成長規模を守っているからです。
身分をわきまえながら、隣のトマトの木と共存しているのです。
これを村上先生は「トマトの慎み」といったのです。


一方で、植物は競争したほうが大きく成長することも確かです。
道端に生えているタンポポを見てください。
周りに背の高い雑草が生えているタンポポは、
競うように自分も背が高くなっています。
しかし、周りに背の高い草が生えていないタンポポ
背が低くなっています。
言うまでもなく、他の植物に負けずに日光を獲得するためです。
つまり、周りに競争要因がない場合は、背が高くならないということです。


この二つのことから、植物は「競争」と「共存」を
うまく使い分けていることがわかります。
こういう生物の生き方から、人間が学べることは何でしょうか。
そんなことを考えています。