コーチ・カーター

コーチ・カーター movie

こういうの好き。
高校時代に名選手としてならしたカーターさんが、
母校のバスケットボール部の監督に就任する。
アフリカ系アメリカンを中心とするマイノリティーが集う学校だ。
多くの生徒が中退するこの高校で、バスケットボールを教えると
同時に人間として大事なことも教えようとする。
最初は、「スクール・ウォーズ」的な話だと思ってみていた。
だけど、違うんですよね。
あっけなくチームは強くなっていく。
けれど、選手たちは慢心。勘違いするようになっていく。
カーターさんは指導者を引き受けたとき、1枚の契約書を選手たちと
交わしていた。そこにはバスケに関することはひとつだけで、
あとは勉強と生活態度についての約束だった。
チームは強くなったけれど、勉強の評価平均2.3以上という約束を
守れない生徒が続出します。
そこでカーターさんはロックアウトを決断する。
練習&対外試合の一切の禁止です。
地域の人は、強くなったチームは街の誇りだとロックアウト解除を要求。
親たちは「子どもから唯一得意なバスケを奪うな」とカーターを責める。
そのときコーチ・カーターが下した決断は……。
カーターさんは、自分が育った街で、黒人少年たちが仕事にあぶれ、
犯罪に手を染め、刑務所に入れられていく現実に心を痛めていました。
彼は、勉強することで大学に行ったり、違う選択肢が広がる可能性を
示してやりたかったと後に言います。
地域の人の言い分は勝手だし、親の言い分はプロの選手に言うのと同じ。
「子供の長所を伸ばす」といってスポーツだけに打ち込ませた結果、
プロになれなかったらどうするのか。
これはスポーツ映画ではなく、教育問題を取り扱った映画なのです。
勉強ができない子に、スポーツで誇りを持たせるのは必要。
だからといってそれが勉強しないでいい理由にはならない。
日本でも同じ状況があるような気がする。
私立の学校は生き残りのために生徒集めに必死です。
スポーツ学校化している学校もある。
授業は昼まで、午後は夜まで練習という高校の部活動はまだ多い。
プロになれるのはほんの一握りで、見えにくいけれど、その陰に
無数のプロになれなかった選手たちがいます。
彼らは勉強をないがしろにして、スポーツに打ち込んだ結果、
どういう人生を送るのでしょうか。
ぼくがカーターコーチのチームにいたら、多分当時は反発したと思う。
「勉強の成績なんて関係ねえじゃん」と思っただろう。
でも、いまならカーターさんの考えはまったく正しいと思える。
カーターさんはバスケを通して、ルールを守ることや規律、
集団の和を乱さないことなどを教えようとした。
社会の現実と厳しさを教え、ときには嫌われても正しい道を
示そうとする姿は本当の教育者のようだった。
そう、彼はスポーツ店を経営している、ただの雇われコーチなのだが、
この映画に出てくる誰よりも教育者なのだった。
長い目で見たとき、高校の部活動はどうあるべきか、教育とは
どうあるべきかを深く問うている映画です。
ぜひお勧めしたい作品です。