映画『単騎、千里を走る』を観る

単騎、千里を走る movie

初恋のきた道』など中国を舞台に印象的な映画を
撮り続けるチャン・イーモウ監督の作品です。
主演は日本映画界の至宝・高倉健御大であります。
なんでも監督は健さんの大ファンだったらしい。
ストーリーは、健さん演じる高田剛一が病状に臥せている息子と
こじれた仲を修復するために、息子がかつて訪れた中国に向かう
というもの。
息子は中国のある地方の仮面劇に魅せられ、ドキュメントを撮る
のだが、ある役者が演じる「単騎、千里を走る」という劇を
撮り損ねたといって悔やむ。
それを知った父・剛一は自分でそれを撮影しようとするわけだ。
このチャン・イーモウという監督、中国が外国からどのように見られ
ているかということをとてもよく知っており、それを常に意識して
いるように見受けられる。
たとえば、雄大な自然、人の多さ、人々の質素な暮らし、他者と
仲良くしようとする心などだ。
そういったものをこれでもかと見せ付ける。
かといって押し付けがましくなく、自然にスッと観るものに入ってくる。
日本人である高田と中国人の心の交流がテーマの映画だが、
監督が「ほら、日本人と中国人ってこんなに仲良くできるでしょ」
と映画を通して言っているようにも思える。
中国では「湯」はスープを意味する。
漢方薬の「人参湯(にんじんとう)」などがそうだ。
中国人は日本に来ると、街の「銭湯」の文字を見て、
「どんなスープがでてくるのだろう」と思う。
中に入ってみると、「男のスープ」「女のスープ」と書いてある。
「そんな分け方があるのかッ!!」と言って驚くという。
なまじ漢字が読めるから、誤解を招く。
肌や髪や目の色もなまじ似ているから、自分たちと同じような
人間だと思い、期待するがゆえにそうでなかったときの反動も大きい。
中国とうまくいかないことはあっても中国人とうまくいかないことは
ないはずだ。ただし、相手は外国人と考え、自分たちとは考え方も
何もかも違う人種なのだと認識することだ。
それは中国人が日本人に対するときも同じである。
うまくいかない理由はしょせんその程度のことなのだ。
話を映画に戻すと、親が子を思う気持ちに中国人も日本人もない
ということもこの映画では述べられている。
ますます中国に対する興味が沸いてくる作品です。