けっこうたのしみにしていた作品です。
そこそこ話題になった映画でもある。
観てみて、外国にもっていってほとんど理解され
なかったのがわかる。
笑いって、「その人がいうから笑える」っていうのがありますね。
その人の話に笑えるかどうかは、その人に好感を持っているかどうかで
けっこう違ってくる。で、この映画もそういう類のもののように感じた。
映画という表現手法を借りなくてもよかった気がするが、
松本人志監督にとってはテレビではなく、純粋にお金を払って観させる
という点で、自分の力量を図ってみたかったのだろう。
映画のテーマは、ずばり「日本人」でしょう。
「日本人って、おもしろいよね」というメッセージがあった。
たとえば、伝統が廃れていっていること。
たとえば、儀式が形骸化していること。
たとえば、なんにでもスポンサーをつけて広告をはること。
たとえば、テレビに出ている人を誹謗中傷すること。
たとえば、老いた肉親を介護すること。
たとえば、饒舌な母と寡黙な父。
映画としては、はっきり言っておもしろくない。
だけれど、こういう日本人観は珍しい。ぼくは感心すら覚えましたね。
監督の観察眼がすばらしいということでしょう。
こういう日本人的なものの羅列が、街頭インタビューによって
いっそう増幅される。そういう辛らつなところと、「獣」とヒーローとの
戦いというバカバカしいものの対比が笑いのポイントということか。
一見、さびしげなものや、悲しげなこと、おそろしいことに
笑いが潜んでいることは確かだと思う。
そういうのを無理にほじくり、えぐり出した映画という気がする。
こんなものを映画館で流した監督のチャレンジ精神には敬服する。
最初からヒットするなんてありえないのだから、
今後も、2年に1本ぐらいは撮ってほしいものです。