死に際の演出

さよなら エルマおばあさん book

職場に転がっている使いかけのボールペン類を
使い切る
ことに幸せを感じるそそくさです。
さて、最近仕事でよい本に出合いましたので、ご紹介です。
「さよなら エルマおばあさん」(大塚敦子 写真・文)です。
アメリカの片田舎に住むどこにでもいそうな普通の
おばあさんが、自分の死と向き合い、自分の死に際を
〝演出〟していく様子が、愛猫スターキティの視点で
描かれる。
血液の病気にかかり、余命あと1年と言われたころから
この物語はじまる。
普通、本人が死について話すと周りは
「なに縁起でもないこと言っているの。誰も死にませんよ」と
言って、死にゆく人の言葉に耳をかさないものだろう。
しかし、エルマおばあさんの周囲の人々は違う。
一緒に死を演出しようと協力してくれる。
そんな周囲の人に見守られながら、実に淡々と
〝死に支度〟をするおばあさん。
自分で治療法を選び、自分で遺骨の処理の方法を決め、
旅立つ日も自分で設定した。
85歳での死は、病気とはいえ天寿を全うしたと言える
とても幸せなものだったと思う。
自分の死はこうありたいと思った。
最近、延命処置をするべきかどうかの事件の記事を目にするたび、
人の死はどうあるべきか考える。
自分の死を自分で決めるのは、傲慢で自分勝手であると思う反面、
他人の意思で〝生かされている〟現実があると思うと、そういう
思いも簡単にぐらつく。
この本に描かれていることは死に際の演出としてはとても参考になるし、
自分の身の回りの人が死に直面したときに、自分がどのような精神状態
でいればいいかということを、予習しておくにはもってこいの
教材だと思う。
かわいい猫の写真を見ながら、簡単に読み終えられる。
ぜひご一読を。