前略 ニート様 

突然のお便りをお許しください。
今日はあなたに何か言えることがあればと思って筆を執りました。
知ってますか?
昔、ジュリアナ東京というディスコが流行りましたよね。
ジュリアナ東京にはお立ち台というのがあって、
ワンレン、ボディコンと言われる風体をした目立ちたい女性が
特殊な扇子を振り回してそのお立ち台で踊ったんです。
それをメディアはこぞって撮影したんですね。
んで、地方のディスコに行くと、ワンレン、ボディコンのおねえさま
たち「ばっかり」がディスコに現れた。
実はジュリアナ東京でお立ち台に上がった女性たちはほんの一部で、
それ以外の女性たちはおとなしい格好で、お立ち台の下で
踊ってたんです。
でも、地方の人たちはディスコとは「そういうものだ」と思って、
みんなそういう格好でディスコで踊るようになったんです。
メディアに登場する流行の現象はほんの一部であって、
しかもまだ流行になっていないものを取り上げているんです。
なぜならもう本当に流行しているものを取り上げたって
「そんなの知ってらあ」って言われるだけだからです。
それなのに、「そんなもんかあ」って思ってしまう。
そういう意味ではまだインターネットのほうが現実を示してますね。
今、景気が盛り返してきたけれど、貧富の差が確実に広がっています。
メディアではセレブと言われる成功者たちばかりが登場しています。
そういうものを見ながら「そんなもんかあ」と落胆している人もいます。
でも本当にそうかなと思うんです。
メディアに出るような人たちは当然ながら一部の人なんです。
セレブは現代社会というディスコのお立ち台で踊る一部の人なんです。
一部の人だから珍しがってメディアが取り上げるんです。
そんな人ばっかじゃないんです。
外に出て一生懸命働いている人を見てください。
慎ましやかに生活している人を見てください。
地方の田舎に行って、それほど裕福ではないが、豊かに暮らしている
人の話を聞いてみてください。
そしたら、みんな自分とそれほど変わらない環境で
暮らしていることがわかると思うんです。
みんなが明るく楽しく、なんの悩みもないように暮らしているように
見えるけれど、そんなことはないんだということがわかるはずです。
あなたとそんなに変わらないんです。
できれば、一歩外に出てみてください。
踏み出してしまえば、あとで「なんであんなに簡単なことが
できなかったんだろう」と思うものです。
あなたも苦しい、私も苦しい。みんな苦しいんです。
でもそれでもみんななんとかやってるんです。
偉そうにいってごめんなさい。
あなたと会える日をたのしみにしています。
草々