10月の雨

雨がこの季節にこれだけ降るというのは珍しいんじゃないだろうか。
雨は格好の舞台装置として、映画や小説のなかで多用される。
雨は、それまでの現実を一瞬にして非現実にする。
人は雨にそうした情緒を感じてきた。
季節の雨を詠んだ短歌や俳句も数多く存在する。
五月雨とか梅雨の雨ならいざ知らず、10月の雨は
やはりそれとは違っているように思える。
10月の雨は冷たい。
今日などは気温も16度だから肌寒い。
残暑がきつかったから、そのギャップを感じるからだろう。
静かな雨が降るときは、映画や小説の中では失恋したり、
人が死んだりするときである。
激しい雨が降るときは、転機が訪れたり、人が怒り狂ったり、
殺人が起こったりするときである。
今日のような冷たい雨が降る日は……。
思いついたことを、思いつくなりに、書き綴ってみたり
したくなるときである。
そう、この一文のように。