「やりたい仕事」などクソ

やりたいことができないからといって、

仕事に悩む若手は多いのだろう。

そろそろ仕事を始めて20年になるが、

今思うのは、自分がやりたいと思うことなど、

クソってことだ。

私は最初やりたいと思ったのは、

スポーツライターだった。

スポーツが好きだったし、書くことも好きだった。

このふたつをドッキングさせた仕事なら、

楽しく仕事ができるだろうと思ったからだ。

実際、編集プロダクションに勤めてみると、

最初からそんな仕事があるはずもなく、

週刊誌のデータマンの仕事をすることになった。

その仕事の次は、単行本の聞き書きだった。

やれと言われてやったにすぎない。

スポーツの仕事はまったくといっていいほどなく、

いきなり省庁再編についての本を任されたり、

企業再生の本をつくったりした。

経済学部でなく、文学部社会学科で学んだ私は、

経済学のいろはの「い」もわからなかった。

本当に学生が読むような単語の本から始めた。

おもしろいもので、単語の意味がわかったら、

経済がわかるようになってきた。

この経験があるから、どんな分野でもいまは

わからないといって投げ出さなくて済んでいる。

一見難しい文章も単語が助詞や接続詞で

つながっている日本語に過ぎないからだ。

そうやって言われた仕事をしていると、

そっちのほうがおもしろくなってきた。

「やりたくない仕事」ではなかったが、

何とも思っていなかった仕事が

やりたい仕事に変わっていったのだ。

「やりたい仕事」などそんなものなのだ。