分業で成り立つ本の制作

いわゆるゴーストライターをやっていると、
話者(著者)に対して、編集者と話を聞きに行ったとき、
最後の取材が終わろうとするとき、やれやれやっと終わったぞ的な
開放感を、彼らから感じることがある。
本1冊にだいたい10時間ぐらいインタビューするから、
そうなるのもわからんではない。
しかし、ライターである私にはその開放感はなく、疎外感を持つ。
彼らからすると仕事はひと段落したのかもしれないが、
私は取材が終わってからが仕事の本番なわけだ。
一冊書くのにだいたい50時間以上はかかる。
平日に5時間やると、2週間かかる。
一日それだけの仕事にかかることができるなら、1週間で終わる。
だが、この1週間は文字通り七転八倒する。
最初の原稿ができてからも、著者や編集者とさまざま相談し、
さまざまに推敲を加えて、書き直す。
それが終わってはじめて仕事が一段落する。
逆に、そのときには著者や編集者は、これから原稿をつぶさに読んで、
どのように改良するかから、どうやってこの本を売るかを
考えることになる。
そのあとは、販売や宣伝(出版社によって呼び名は違う)も
加わってどうやって売るかを考える。
こういう分業で本の制作は成り立っているのだ。
「なんだ本人が書いてないのか」と言われることもあるが、
分業のメリットもあるので、聞き書きも悪くないのではと思う。