ライジングショットとは何か

図解ライジングショット

15年ぐらい前、私がよくテレビで見るスポーツは、テニスが
野球とサッカーの次に多かったものです。
特に女子テニス。
今のようにパワーテニスになる前は、ほんとに優雅で華麗でした。
グラフとか、ヒンギス時代が、ぼくのテニス黄金期でした。
そのおかげでテニスについてちょっとはわかるようになった。
実力伯仲の試合では、1球が勝負を分ける。
たくさん試合を観るとよくわかる。
番狂わせが起こるかもというときでも、必ず上位者が勝つのは、
「たった1球でも、その間には厳然とした実力差があるのだ」ということ。
これはどんなスポーツでも同じです。
ギリギリの勝負をブレイクし続けた人だけが、超一流になれる。


当時、見る機会がたくさんあったのは、伊達公子がいたから。
彼女はすごかったですよ。
なんてことない球筋なんだけど、明らかに相手があわててるのがわかる。
それもライジングショットによるものなんですよね。
ライジングショットとは、バウンドしたボールが上がりきる前に
打ち返してしまうことをいう。
ぼくらが野球を始めたころに守備の面で教わったのは、
「ゴロはバウンドして地面におちる直前が一番取りやすい。
その次はバウンドした直後。バウンドと頂上の中間が一番取りにくい」
ということです。
つまり、ボールのどの時点が勢いが弱いのか、
眼で追いやすいのか、捕らえやすいのか、ということです。
その意味でいくと、伊達さんは一番ボールが捉えにくい地点で打っている。
そのため、ボールの勢いが強い時点で打つから反発も強く、勢いのある球が
打てる。相手の体勢が整う前に打ち返すから、ラリーの主導権を握れる。
でも、あれをやるには、驚異的な運動神経と動体視力が必要です。
素人では難しいし、プロのレベルでも難しい技です。
彼女は高校時代から有名なテニスプレーヤーでしたが、
初めて行ったバッティングセンターで、右でも左でも完璧に打ち返した
という逸話が残っていますから、ハンパじゃありません。


その伊達さんが現役復帰している。
こういうことを言ったと伝えられている。
「若手の刺激になりたい」と。
人にはそれぞれ美学というものがあると思うんだけど、
ぼくだったらそういうことは思っていても言わない。
それを腹にしまって、「自分にために復帰した」というだろうなと思う。
もし彼女が、
「そんなことで刺激になってたまるか。高みから言ってんじゃないよ!」
と若手が反発することを狙ってのことなら、わかるけれど。
結果的にプレーより発言で刺激を与えていると思う。
どっちにしろ、若手は冗談じゃないわよ、と思ったと思う。
悔しかったら勝つしかない。
勝ったらなんとでも言える。高みからだろうがなんだろうが、
好きなことがいえて、それをある程度の説得力をもって
聞く方も聞いてくれる。
今後、どんな若手が出てくるか楽しみです。