ぼくはまだ中年になったことがないので、
周りの中年男性がどうしてそうなるのか理解できない。
だが、たまに腹が立つことはあっても、
「自分もやがてああなるのかもしれない」
と思いながら、中年男性の観察をおもしろがっている。
50代男性2人と都内を移動することになった。
A氏はこの寒いのにコートも着ていない。
「私はね、コートのポケットにまたいろいろ入れるとなくすから」と
コートを着ない理由をB氏に話している。
(そんな理由って、あるのかッ!)
地下鉄に乗る段になって、A氏は切符を買おうとする。
今日日の地下鉄はパスモやスイカ、
他のプリペイドカードで乗るものだと思っていたが、A氏は
「いや、そういうのを持ってもなくすだけだから」
というのである。
一方、B氏はパスモを使っているが、クレジット機能はつけていない。
その理由は、
「クレジットカードを増やしてもなくすだけ」
だからだという。
事実、B氏はサイフ、メガネ、コート、バッグを
飲み屋に忘れていった前科がある。
彼らはほぼ毎日飲み屋に出入りする。
そのときに金目のものを持っているとなくすから、
たとえ便利であっても持たない生活をしている。
頭のいい人たちがいろんな便利なものをつくっても
「なくすから」という理由だけで使わない人がいる。
これからのツールは、老化を前提にしたシステムがいいな。
彼らを見ていると、自分もなくすようになるのかと思って怖い。
彼らが単に酒に酔ってだらしなくなるというだけなら、
酒をあまり飲まない自分はセーフかもしれないが。
とにかく、彼らを見ているとそういうところがおもしろいのである。