映画『ノーマンズ・ランド』で描かれた戦争

この映画は確かに戦争を描いている。(以下、ネタバレがあります)
だが、戦闘機同士の打ち合いや、戦車が大砲を撃つわけではない。
人がたくさん殺されるわけでもない。
三人の兵士が、ごく狭い空間で演じるやりとりが中心だ。
バルカン半島での戦いを描くのだが、出てくる兵士は
セルビア人とボスニア人。
このふたりが序盤に交わす会話に印象的なものがあった。
彼らは、戦争を仕掛けたのは互いに相手らだと言って譲らない。
それが、「戦争を仕掛けたのはどっちだ?」と銃を向けられると、
「おれたちだ」と認めるしかなくなる。殺されるからだ。
銃を向けられていないと譲らないが、
銃を向けられているととたんに折れる。
これが武器を持っている国とそうでない国の縮図に見える。
実際、国連平和軍が出てきて仲裁しようとする。
これも、戦争を周りで見ている国と見ることができる。
この映画は、塹壕という狭い空間を、
「どのようにして戦争が起こるか」の縮図にして
見るものに訴えるようにできている。
結末はひらすら物悲しい。
その点も、どうしても戦争そのものを端的に示した
縮図に見えてしょうがないのだ。