パチンコ屋大冒険

先日、10年ぶりにパチンコをプレイしてみた。
あのハリウッドの大物俳優、ニコラス・ケイジ
大好きな、名古屋生まれの遊戯だ。
「このあと時間がないから」というある人の後を
受けてやってみたのだ。
それは浪人生の19歳のときに、友人のFに連れられて
いったとき以来の出来事だった。
私が席に座ったときには、確変(確立変動)が
起こっている最中だった。
確変になると、必ず当たるらしいことは知っていた。
ただ、何が「当たる」のかは知らなかった。
やっていくうちに、パチンコ台の中央部の液晶画面に
映し出されたスロットのような、絵や数字の表示のなかで
7が3つ揃えばいいらしいことが理解できた。
私は五里霧中で、手探りで打っていた。
30分ほどして「リーチ!」と言われ、7が三つ揃った。
なんだか知らないうちにフィーバーしてしまったらしいのだ。
それからが大変だった。
どこに玉を入れればいいのかわからない。
出てきた玉をどう処理すればいいかわからない。
これだけデジタルの世の中になっているというのに、
パチンコの玉の実物を積み上げていかなければならない
不条理に、私は一瞬、憤ったが、それが逆にいいのかも
しれないと変に納得しながら打った。
その後、確変は終わった。
店のおにいさんやおねえさんが、台に引っ掛けてあるカードを
縦にやったり、横にやったりするのは
あれはいったい何なのか。
誰かへのサインなのか。
世の中への警告なのか。
私への強迫なのか。
私はお菓子と、なんだかよくわからないMDディスクの
ようなものを渡されて店を出た。
たしか昔、それを別棟の換金所に持っていけばいいらしいことは
教えてもらったが、この店はそれがどこにあるかわからない。
店を出て見回すが何もない。
しばし、オロオロ、アタフタ。
ひととおりヘゲモゲしたあと、裏手に回ってみると、
あったあった、換金所。
なんだかよくわからないMDディスのようなものを
丸い口のある机の引き出しのようなものの中に入れると、
顔が見えないようになっている奥の人が、
無言でそれを引き取り、事務的に金を数え、
金をその引き出しに入れて戻してきた。
私もそれを無言で受け取ると、そそくさとその場から
引き上げたのであった。