「名刺交換させてください」の真相

私のいっぱしの東京人であるな、と思うことがある。
春になると、会社の研修か何か知らないが、
「度胸をつけるために、知らない人と名刺交換する」
という課題を新入社員につきつけている会社があるらしい。
そういう人についに私も出会った。
「会社で名刺交換する研修をやっているんですけど、
お願いしてよろしいでしょうか?」
30前後の女性で、なかなかの美人だ。
私は、「ちょっと勘弁して下さい。すみません」
といって足早に立ち去った。
先日、マインドコントロール関連の取材をしたとき、
こうした研修を装って名刺を交換し、あとで投資の提案を電話、メールで
しつこくやってくる会社の話を聞いたばかりだったからだ。
都市部にはこの手の話がよくあり、最近はSNSを活用する手もあるが、
従来型の路上キャッチの手法も健在らしい。
私の対応は、「東京人は冷たい」という人たちがいう
「東京人」そのものだっただろう。
道を聞くふりをしてナンパや勧誘セールスを行なうのも多い。
こういうのに「東京人」は慣らされているから、冷たくなる。
ただし、こういうシチュエーション以外の東京人たちは
決して冷たくない。
老人に席を譲る人をよく見かけるし、
子どもを連れているとよく声をかけてくれる。
件の女性がその手のセールス目的だったかはわからない。
度胸をつけるなら別の方法があるかもしれない。