本をあげます

あるベテラン芸能記者に教えられたことがある。
「芸能事務所に持っていく土産はいつも同じにしろ」
メロンならメロン、羊羹なら羊羹、変えるなというのである。
ずっと同じものを差し出していれば、
「あ、メロンの人だ」となるからだ。
そうやって覚えてもらえれば、いつかネタが転がり込んでくると。
それを聞いてから私は、甥や姪、義弟夫婦の子どもたちにも
プレゼントはいつも本にしようと考えた。
そうすれば、「あ、本のおっさんだ!」と覚えてくれるに
違いないと思ったからである。
もうひとつの理由は、私自身、子どものころに本を
あまり読まなかったからでもある。
野球とテレビゲームしかやってなかった小、中学校時代。
あの多感な時期にもっと本を読んでいれば、
もうちょっとましな人間になったはずである(笑)
そんなわけで子ども時代にたくさん読んでほしいのだ。
だが、プラスチック製の大掛かりなおもちゃや、
電動で走る車輪のついたおもちゃ、ゲームソフトに慣れきって
しまっている彼らには、見向きもされない。
だいたい一瞥して終りで、そのあとは手にとってもくれない。
でも、それでいいのです。捨てさえしなければいい。
誰でも最初は、自分で選んで買った本ではなく、
家に置いてある本を「なんの気なしに」手に取って、
そこから読書の魅力に気づいていくものだからだ。
中学生、高校生になってからでもよい。いつか読んでくれればよい。
これからも本を贈り続けると思う。