フィルターをとりはずそう

小さな会社に勤めているが、こんな零細企業にも高校生や大学生が
社会勉強や授業の一環で話を聞きにきてくれる。
こっちは職業的に興味をもってもらうためにどんな話をしようか
毎回悩むのだが、手ごたえのなさを毎度感じる。


そんなある日、ある会社の社長さんからこんな話が出てきた。
彼は有名大学の講師もしているが、
「フィルターがかかっている人にどんなにいい話をしても無駄。
フィルターに合った話をすることが大事」だという。
というのも、彼自身、若いころに受けた研修だとか、取引先を見学して
回ったときのことが、今になってやっとすばらしい経験だったと
わかるというのだ。ちなみに彼はもう60代半ばである。
ところが、その当時は、研修を受けても「早く終わらないかな」と、
学ぼうと思っていないから、何も気づくことがなかったというのである。


人は会社や学校など、所属している組織の行動様式を模倣し、
場合によってはそれによって性格までも決定していく。
その組織に必要とされる考え方が身につき、それがフィルターとなって
新しい情報が入るのを拒む。
なぜなら、人は変化したくない動物だからだ。
変化には多大なエネルギーを要する。ならば、変わるより現状維持で
エネルギーを温存しようとする。
その状態が「めんどくさい」というやつだ。


何事からも学ぼうという意識で見たり聞いたりし、
エネルギーをかけて変化するのは確かにめんどくさい。
そういうフィルターを取り外すには、
「このことから何か学べることはないか」
という意識で生きることだと思う。
とはいえ、そういうのを高校生や大学生に求めるのは酷というもの。
自分だってそうだったに違いないのだから。
そうであれば、「フィルターに合った話」をするしかない。
彼らの一番興味のあるところを入り口にしてみると、
案外とすんなり耳に入っていくのかもしれない。
そんなことを思ったりした。