懐かしい声

懐かしい声だった。
以前、仕事である人を取材した本を書いてから、その関係者として
あった中年女性から電話がかかってきた。
お会いしてからもう7年もたった。
毎年、必ず年賀状のやり取りだけは続けてきたし、
一年に一度は電話で話すことがあった。
彼女の声を聞くとあのときのことを思い出す。
10年たったら、「本のその後の話」として裏話を公開できるかなあ、
なんて思っていたけど、まだまだそんな気がしない。
彼女はあのときよりもまして元気なようだった。
4年ぐらい前だったか、一度、ご自宅に遊びに行ったことがあった。
ご主人と一緒に歓談した夜の、何と静かだったこと。
また夏までに遊びに来てくださいとおっしゃる。
今年の夏、あそこに行けば、あの本の中で起こったことが
私の中でようやく終わるのかもしれないと思ったりした。