古事記の影響 

なぜ日本の武家政権では、朝廷を打倒することなく、

天皇の威光を利用しながら権力を集めていく

ということができたのだろうか。

それは古事記日本書紀の影響なんだと思う。

古事記日本書紀では、神話による神々の時代から、

初代の神武天皇、歴代の天皇について述べている。

古事記日本書紀が成立したのは、八世紀のはじめごろ。

それ以前から、日本には八百万の神の時代があった。

木や岩、山など自然物などあらゆるものを神とする

多神教の世界があった。

自然神が生まれたのは、それだけ自然が厳しかったからだろう。

そのようにして、あらゆる神の世界というベースの上に、

天皇を神格化させることに成功したのが古事記だった。

これが武家政権になっても天皇を打倒しなかった理由なのでは

ないかと思う。

武家政権としては、自分が武力に訴えたとき、

大義名分がなければならない。

これがないとたとえ戦に勝っても国民の信を得られないからだ。

神格化されている天皇家を担ぎ、大義名分を振りかざすことで

自分が権力を握ることを目指すわけだ。

このように考えると、古事記が物語調であることの意味も

理解できる。

物語で感情に訴えなければ、国民からの支持は得られないからだ。