完璧という病理

本当に不思議なのだが、同じフレーズが、
異なる分野の人の口から語られることがある。
先日、あるパン屋さんを取材したら、
日本人は完璧主義すぎると言っていた。
誰かが「パンが焦げている」というと、それに合わせて
薄い色のパンを焼くようになる。
100のうち、90人がそれで満足していて、
9人が不満で声を上げない人、残りのひとりはクレームをしてくる。
9割の人を満足させられたら、パン屋としては成功だろう。
だけど、ひとりの声の大きい人に引っ張られて
仕様を変えてしまうと、残りの90人が損をするというのだ。
ラグビー日本代表エディー・ジョーンズ氏の本でも、
「日本社会は完璧ということにとらわれすぎている」といっている。
そのあまり、選手のミスばかりを指摘し、
選手から自信を奪ってしまっている、というのだ。
もちろん、完璧主義がいいものを生み出すこともある。
でも、それはやっていい場面とそうでない場面がある。
思えば、日本の「おもてなし」も完璧主義の象徴かもね。
泊まったことはないが、高級ホテルなんかもそうらしい。
なんだか監視されているみたいで、ぼくなんかは気味が悪くなる。
あるバス会社は、回送のバスに「すみません、回送中です」と
掲げている。そんなことどうでもいいだろうと思う。
これってクレームを言われないための先回り作戦だろう。
完璧にするために、細部を詰めなければならず、
仕事はどんどん増えていく。
こんなところにも長時間労働の要因があるのかもしれない。