生まれや境遇でなく

江戸中期、寛政改革で時の老中・松平定信が実施した
「人足寄場(にんそくよせば)」という政策がある。
農村から出てきて、仕事にあぶれた宿なしの人々が、
生活に窮して盗みを働き、江戸の治安が悪化したので、
寄せ場をつくって職業訓練をした。
この発案者が「鬼平」こと、長谷川平蔵である。
平蔵は、比較的裕福な旗本の子として生まれた。
だが、父親が女中に産ませた子であったため、
家庭不和となり、グレた鬼平は放蕩生活を送る。
遊郭に出入りし、悪友と遊び歩いたという。
そのときに裏社会との人脈ができたため、
火付盗賊改方という役所の長官になったときには、
裏人脈が役立ったという。
平蔵が人足寄場をつくったのも、自分も間違っていたら
こうなっていたかも、という思いがあったんだろうね。
生まれや境遇で罪を犯すのではない。
仕事があって、食っていける金が稼げれば、
人は罪を犯さなくなるものだという感覚だったのだろう。
鬼平犯科帳』ではそうした下りはないらしいのだけど、
そんな「鬼平」も見てみたい気がするな。