発達障害と進化 前編

いま引きこもりをテーマに取材を行っている。
引きこもりの人の中には、
発達障害の人がかなりの程度いるという話だ。
発達障害は、社会性に関連する領域にみられる発達障害の総称で
小児自閉症アスペルガー症候群、レット症候群、
小児期崩壊性(しょうにきほうかいせい)障害、
特定不能の広汎性発達障害、その他が含まれる
というのが一般向けの解説である。
社会性に欠ける特徴を発達障害といってまとめている。
こういう分類は、さまざまな理論があって、
専門家の間でも意見が分かれる。
ここでもひとくくりに発達障害といってしまうことの
乱暴さを承知の上で書くことにする。


発達障害のいくつかは、遺伝子の異常によって起こる
と考えられている。
私は専門家ではないので、「遺伝子の異常」というのが
どの程度、「異常な状態」なのかわからないが、
何をもって異常というのだろう。
それがもし多数派に比べて、少数派だからという理由なら、
本当に異常ということになるのかわからなくなる。
多数派が正常で、少数派が異常というのが、
医学界の見解なのだろうか。
正常と異常という言葉に、プラスイメージ、マイナスイメージが
くっつかないのであれば、そういう言い方でOKだろう。
でも、正常がプラスで、異常がマイナスというイメージなのが、
いまの一般社会だろう。
そうなると、正常であることが善(望ましい状態)とされ、
異常であることが悪(望ましくない状態)とされることになる。
こうなると、多数派が善で、少数派が悪という図式になる。
こういうのを押し隠すために「普通」という言葉が用いられる。
「普通」とはいったい何なのだろう。
多数派が普通で、少数派が普通でないということになるのだろうか。