時代と善悪

このブログで何度も『巨人の星』の星一徹おやじについて、
書いています。
原作漫画をきっちり読んだ人は、星一徹は暴力おやじではなく、
人格者であることを知っているのですが、
断片的にアニメを見ただけとか、携帯電話のCMで垣間見た
だけという人は、その悪いイメージだけを持っています。
彼を象徴するひとつが、「ちゃぶ台返し」です。
これは多くの人が指摘しているように、原作では「ちゃぶ台返し」を
したのは一度しかありません。
理由は、大リーグボール養成ギブスを息子につけさせ、
絶対に他人に知られてはいかんと厳命したにもかかわらず、
息子は友だちにばらしてしまい、それを隠していたことに対して
怒ったのでした。
星一徹が怒ったのは、ウソをついたことに対してでした。
決して理不尽に殴りつけたわけではありません。
酒に酔って、その場の気分で殴ったのではないのです。
それに、息子が通う高校の野球部の監督になったときも、
自分の子以外に手を出すこともなかったし、ましてや女性に手を出す
こともいっさいありませんでした。
彼の人格が現れているエピソードにはこんなのあんなのがあります。


と、ここまでで一徹氏の名誉を回復したところで、
現代で問題になっている、体罰問題に話は移る。
いわゆる体罰には、私は完全に否定派です。
体罰は、指導力の足らない人のやり方と断じます。
星一徹だって、スクールウォーズ山下真司扮する教師だって、
子どもを殴ったじゃないかという人がいる。
スクールウォーズラグビー関係者の中では、
いまだに再放送を望む声が多いらしいです。
入部する部員が劇的に増えるからなんだそうです。
でも、もはや再放送は無理でしょう。
現代では、ドラマを現実社会と混同する人が少なくなく、
体罰はけしからん」という人が必ず出てくるからだ。
その点、「巨人の星」はアニメだからまだ許される。
でも、スクールウォーズだって、再放送してほしいですよ。
何が正しいか、何が間違っているかは、
時代や国が違えば、違っていて当たり前。
絶対に正しいこと、絶対に間違っていることなどありません。
だから、親や教師は、子どもに今の時代、日本という国で
正しいとされていること、忌避されていることについて
しっかり教え込む必要があるのです。
だから、今、体罰が問題視されているからといって、
過去の体罰のすべてが一律に悪いというわけではないのです。
過去の特別な事情を知らない人が、聞きかじった知識で
悪いと断じるべきではないのです。
現代は、昔とは違います。
昔は、体罰はある意味をもっていたかもしれません。
でも、現代において体罰が忌避される行為であるという
社会全体の同意が得られている中では、体罰は間違っても
正しい行為とは言えません。
私たちは、常に変化する社会情勢にそって、
自分の言動もそれに準じるようにしなければなりません。
「いまそれをやっちゃだめ」「いまそれを言っちゃだめ」
というのがあるのです。
だからニュースを知る必要があるのです。


もちろん、時代や洋の東西を超えて通じる、普遍的な道理もあります。
それは善悪とか、道徳的なものとは別次元のものです。
星一徹の言動は、暴力的なのが目立ってしまうけど、
実は普遍的な道理を踏まえたものも多いのです。
巨人の星」は単なるスポ魂野球漫画ではなく、
一人の少年が青年へと成長していくヒューマンドラマです。
アニメもいいですが、ぜひ漫画での一読をお勧めしたい作品です。