拝啓 年配の男性労働者様

拝啓 年配の男性労働者様


家事や育児をする若いお父さんたちのことを、
「出世を放棄したやつらのすることだ」という年配男性の発言をネット上
で見つけ、頭にきたのでつい筆を執った次第です。


かつて年配の男性にとって、家事や育児は仕事よりも価値的に
一段劣るものであり、家庭での生活は、
仕事をメインとしたサブの意味しかありませんでした。
だから、以前は休日に家族と出かけることを
「家族サービス」といったのです。
家族はサービスする対象だったのです。
昔はそれがかっこいい、できる男だったのかもしれませんが、
私から見れば、「靴下がどこにあるかもわからないなんて情けない」
としか思えません。


いま若い男性が家事や育児に向かっているのは当たり前です。
そうです、出世が難しいからです。
そもそも出世を放棄させたのは誰なのでしょうか?
年配の方々は、自分の生活を守るために新規採用を減らしたのでしょう?
自分の子どもの世代の採用を減らしたのですよ。
いまの30代は非正規社員が多いのは、年配の方々がバブルのときに
ムチャクチャやった「不良債権」の責任を取らされたからですよ。
いまの41〜46歳ぐらいにはいわゆるバブル組が多くいて
30代は出世したくてもポストが空いてないのです。
上は多くいるのに下がいないものだから、
仕事が集中し、疲弊している人も少なくありません。
家庭を顧みずに仕事をした結果、熟年離婚の恐怖に
おののいているのは誰なのでしょうか。


もちろん、今日の豊かな社会を築いてくれたのは、
年配の方々のおかげにほかなりません。
一心不乱に働いたから、私たち若い世代も豊かに暮らしていけるのです。
若い世代は、ほんとうはそのことに感謝しているのです。
でも、物質的に豊かになったということは、
もう家庭を顧みずに長時間労働をしなくてもよくなった、
ということなのです。


日本人が忙しさのあまり失ってしまった人間的な感覚を
私たちの世代は取り戻そうとしています。
家族や家庭、地域の中で暮らしていく、ということです。
仕事だけが人生ではないはずです。
だからといって仕事の手を抜くつもりもありません。


ですから、家事や育児をする若いお父さんを
「出世を放棄した」とか、「できないやつ」と断罪するのはよしてください。
これからは男も女も、家事と育児、そして介護をやらなくてはいけません。
体の自由のきく人が確実に減っていくのですから、
誰かがやらなければいけないことを、人任せにせず、
男もやらなければなりません。
そう、時代は変わったのです。
時代の変化にそって頭の中も変えていかなくてはなりません。


敬具