常識のない人たち

友人を通じて知り合った弁護士さんがいる。
20代でパートナーの女性弁護士と二人で事務所を開設した
有能な弁護士さんだ。
いろんな話を聞いたが、ひとつ印象に残ったのは
「弁護士は常識のない人が多い」という話。
弁護士仲間に結婚式の招待状を送ったとき、「御出席」の「御」を
消さなかったり、そもそもハガキを返さなかったり、
ご祝儀に新しいお札を入れる人さえ少ないのだという。
自分のときを思い出してみると、「御」はすべて斜線が引かれていたし、
ハガキもすべて戻ってきたし、9割がた新しい札が入っていた。
常識のない職業、世間ずれしている職業としてよくヤリ玉に
あがるのはなんといっても医師と教師であろう。
弁護士なんかは一番そういう面がしっかりしている
と思っていただけに意外であった。
公務員のように安定していたり、医者や弁護士のように社会的地位が
高い職種は、人々の羨望とそれとは裏腹のやっかみを買うものである。
そのため、「常識のない」面がことさら強調される。
教師や医師がそういう人がいるのは確かだが、それと同じくらいの
確かさで立派な人が大勢いることも事実だ。


で、何がいいたいかというと、限られた人間関係だけで完結できて
しまう職種ほど世間ズレしやすいということなのだ。
教師や医師はその典型だからそうなる。
その点、たとえばメディア関係者などは別の点でマヒしている。
「取材される」ということがどういうことなのかマヒしてしまい、
被取材者のプライバシーを考えなくなる。
どの職種にもマヒする要素がたくさんあって、
長くその業界だけにどっぷりつかっていると、
その業界だけで通用する常識がワールドスタンダードだと思い込み、
世間ズレしていっていることに気がつかない。
この職業的マヒを回避するにはどうすればいいか。
方法はふたつ。
ひとつは本を読むこと。
もう一つは、毎夜、同じ業界ばかりの人と飲み、
上司のグチで溜飲を下げるのではなく、
意識して別の職業の人と交流することだ。
学生時代の友だちや、同郷の知人、趣味でのつながりなど、
利害関係のない人がよい。
そして、「それは違うんじゃないか」といってくれる人を
大切にするということだ。
「グチばっか言っててもしょうがないじゃん」
と言ってくれる人を大事にすることだ。
そうすれば「常識」がズレないし、マヒしない。
「弁護士でもそうなのか」と思う半面、
「自分はどうか」と改めて考えさせられた。