「ポケットティッシュの配り方」講座

今朝、事務所の最寄り駅でポケットティッシュを手渡された。
とても受け取りにくかった。
なぜなら私の胸の辺りにティッシュを掲げられたからだ。
そんなたいそうなものをもらうわけでもないのに、
「ははー」って言わなきゃいけないのかと思った。
昔、埼玉のある駅でティッシュ配りをしていた人を思い出した。
年は20代半ばから後半の男性。慣れた手つきで渡していく。
渡し成功率は、私が見る限りでは100%であった。
私はその妙技に目を奪われた。観察していると、他のティッシュ配りの
人とは明らかに違う点があった。
彼は、歩く人の手の振りに合わせて、自分から相手の手のところにまで
ティッシュを差し出していた。
歩く人は腕を上げて手を差し出すまでもなく、5本の指を軽く
動かすだけで受け取れてしまう。
この差は大きい。なるほどなあと思った。
腕を持ち上げるのさえカッタルイ。そういう心理を見抜いた妙技だった。
これならほとんどすべての人がティッシュを受け取ってしまうのも
うなずける。
けれど、こうした渡し方をするポケットティッシュ配りの人は
あまり見かけない。
みんなだいたい2個渡してしまっていたりする。数の論理で勝負する。
でもこの人は違う。もらう側の心理に訴えかけている。そこで勝負する。
こっち側にいれば簡単にわかりそうなこのテクニックも
あっち側にいると気づくのが本当に難しいのだろう。