地獄見たりなば

みんなが「腕を組んで歩く老夫婦ほどこの世で美しいものはない」
というけれど、果たして本当にそうだろうか。
その老夫婦のどちらかが、認知症だったり、足腰が弱って一人で歩くのは
危なっかしいから、腕を組んでいるのだとしたら?
まだ老人になったことのない、老人以前の人たちは、
自分が老人になって初めて気づくことがたぶんきっとあるだろう。
体が動くことがどんなに幸せか、話をする人がいることがどんなに重要な
ことか、毎日することがあることがどれほど意味があることなのか、
私たちは気づかない。
気づいて幸せを感じることができる人は幸せだ。
それを気づかせるために、たまに不幸な出来事が起こるのではないか
と思ったら、どんな出来事も許容できる。
女性の苦労話を本にするために、さまざまな人生の苦労をした人たちと
電話でやりとりしたが、本当にハツラツと元気いっぱいの様子だった。
地獄をくぐり抜けてきたら、もう生きてるだけでハピネスを
感じられるのかもしれない。
ただし、だからといって地獄を垣間見たいとは決して思わないのだが。