今のサラリーマンは自分の色を求められる。
昔は黒でもなく、白でもなく、なんとなく灰色で目立たなくして
いれば、サラリーマン生活を続けることができた。
30年ぐらい前の小学生は、「なりたい職業は?」と訊かれて、
「気楽なサラリーマン」と答えていたくらいだ。
ところが、いまサラリーマンが気楽だという人はいないのではないか。
そうなったのはITがもたらしたのではないかと考える。
ITは業務の効率化に大きく貢献した。
昔は3人かかってやっていた仕事が1人で済むようになった。
企業はITでパソコンを買う代わりに社員をリストラした。
その結果、極端に言えば、多くのサラリーマンの仕事は
「企画」になったのだ。
これは営業の分野でも「企画」が求められるようになった。
企画するためには個性が求められる。
だから、個性偏重の教育も各教育機関がこぞってやってきた。
サラリーマンでさえ今は自分の色が求められるようになった。
それに窮屈さを感じる人は「気楽なフリーターがいい」と
なっていった。そういうことではないかと思う。
人間は産業革命で重労働から解放され、
IT革命で単調な仕事から解放された。
「これで創造的な仕事ができる」と思った人も多かったが、
別の問題も出てきた。単調と思われる仕事でも「そのほうが気楽」と
考える人が出てきたのだ。
個性を伸ばし、会社の経営者になる人や、プロジェクトリーダーとなっ
て周囲をひっぱっていく創造的な人を育てようというのが今の社会だ。
けれど、その一方で「言われたことをきちんとやる」ことに長けた
人がいることも事実であり、そういう人がいなければどんな優れた
ビジネスモデルを描いてもそれは画に描いた餅となる。
この二律背反するような問題を、これからの日本はどうやって
解決していくべきなのか。本当に難しい問題だ。