オランウータンの綱渡り

北海道に旭山動物園というのがある。
なんでも上野動物園を抜いて、日本一の入場者数を誇るという。
その動物園は、動物の生き生きした姿を見せようと知恵を絞った。
それが一つの成功の理由だという。
その知恵の中にオランウータンの綱渡りだ。
オランウータンが園内に張られたロープを
前足を使って渡るというものだ。
これを見た東京の動物園も、同じような「アトラクション(?)」
をつくった。それもその綱が世界一長いというのだ。
ところが……。
大観衆が見守る中、件のオランウータンが綱渡りの綱と対峙した。
オランウータンは3メートルほど綱をわたると、
困惑の表情を見せて、ずるずると後退したのだ。
本人、怖かったのだと思う。
本人、不安だったのだと思う。
「これは無理だわ」という判断だったのだろうと思う。
それはたぶん賢明な判断だった。
世界最長と謳ってあるから、ものすごく長いのだ。
さすがのオランウータンも落下による危険を察知したようだった。
動物とはいえ、ぬくぬくと暮らしている園のなかで、
なにゆえにあえて危険な賭けをしなければならぬのか。
動物っつってもやっぱり怖いんですよ。
かわいそうに。なんかもっと別の方法を考えてあげてください。