「同調圧力」は本当にあるか?⑤ 

周囲からの同調圧力を感じてしまうのは、

日本では長らく「個」を持つことがよしとされなかった背景がある。

それはすでに述べたように、突出することが許されない村社会の掟が

あったからだ。

それが終戦によって国民主権になったから、国民は戸惑った。

これまで国民は主権を持ったことがなかった。

貴族であれ、武家であれ、天皇であれ、為政者はいろいろ替わったが、

国民はずっと被支配者だった。

それが急に主権なんてことになったから、どうしていいかわからない。

建前上は国民主権であって、政治は国民の代表者が行うことになっている

のだが、実際は、国民は主権を行使しているなんて思ってなんかいない。

偉そうで頭の良さそうな人に政治を任せればいいと思っている。

つまり、主権になっても自ら権利を行使していると思ってない。

だから政治家を過度に批判する。

批判は大事だけれど、どこかで

「こんなお粗末な政治家を選んだのも自分だしな」

という感覚を持っていないといけない。

そういう感覚があるからこそ、政治家を真剣に選ぼうとするものだ。

偉そうで頭の良さそうな政治家に従属してしまっている。

その意味で、やっぱり国民は被支配者なわけだ。

そして、日本人はこうやって支配されることが

心地よいと感じる国民でもある。

そのほうが難しいことを考えるよりラクだと思っているのだ。

実はそこに息苦しさがあることに気づいていない。