「おかえりなさい」の忖度

かつてこういうことがあったのだそうだ。
朝のテレビの情報番組でキャスターが番組の終了時に
「では、みなさん、今日もいてらっしゃい!」
と元気に言って終わったら、視聴者から電話がかかってきて、
「自分はいま夜勤から帰ってきたんだから、
いってらっしゃいと言われたくない。
そういう人がいることも考えてくれ」
といったのだという。
(これが週刊誌などになると、「わしは今帰ってきたとこなんじゃ。
みんなが朝出ていく仕事だと思うなよ」と言ったことになる)
いまこういうクレームが入ると、キャスターは大変だ。
「これから出勤の方、いってらっしゃい!
いま夜勤から帰ってきた人、おかえりなさい!」
と言わねばならない。
そしたら、無職の人から電話かかってきて、
「自分は無職だから、行きもしないし、帰ってもこない。
みんな仕事してると思うなよ」
と言われるかもしれない。
そしたら、キャスターは
「これから出勤の方、いってらっしゃい!
いま夜勤から帰ってきた人、おかえりなさい!
プラプラしてる人は、やすみなさい!」
と言わなければならなくなるかもしれない。
そうやって全員に配慮しようとすると、
メディアの表現というのは、成り立たなくなるのだ。
例外を考慮すると何も言えなくなる。
メディアはそういう意見に対して、しっかりと自分の意見をもって
反論できるようになっておかないといけない。