確かに地味にスゴイ校閲の技

校閲で思い出した話をひとつ。
校閲さんからの指摘で「そんなことまで知ってるのか!」と
驚くことは度々だが、最近の話題をひとつ。
漁業の話で、昔は「櫓(ろ)が海底につくかどうかで、
沿岸と沖合の区別をしていたという文章を書いた。
すると、校閲さんから「この櫓とは櫂(かい)のことではないのか」
と指摘されたのだ。
櫓と櫂の違い、そんなこと考えたこともなかった。
曰く、櫂は単に水をかく棒のことをいう。
櫓は、櫂とそれを支える支点部分の装置全部を含めた名称だというのだ。
私はうなった。
結局、文章は櫓から櫂に改めた。
こんなことは校閲さんからすれば序の口だろうが、
私たちのような浅学なものには感嘆に値する。
こういう指摘があるからこそ書き手は鍛えられる。
若い書き手さんはこういう指摘をたくさん受けるのが
文章がうまくなる秘訣だと思う。
書き手はただただおもしろい文章を目指して表現を工夫する、
校閲さんはその矛盾を指摘したり、読みにくさを改善する修正案を
示してくれる。
そうやって活字文化は成り立っている。