見えることは想像力を阻害する

あるきっかけで「ひきこもり」をキーワードにした集まりに参加した。
そこには当事者もいれば、その親もいれば、支援者もいた。
そこにいたある人が就職活動に言及したことが印象に残った。
「過去に何をやったかだけで判断される。
面接官はいま何ができるかはまったく見ようとしない」
だから、ひきこもりで履歴書に空白があると、
それだけでかなりの不利になるというのだ。
昔は、この人はこういういいところがありそうだ、という目には見えない
部分を評価して、「おれの責任で採る」という人事担当者がいた。
でも、そういう人はなかなかいないというのが
現状なのだそうだ。
ここ何十年かで人間って「目に見えにくい部分」を
評価することが苦手になったよね。
なんでも数値で評価されるようになったしね。
ある落語家が「見えることは想像力を阻害する」といった。
だから、落語の場合、聴き手の想像力にゆだねているから、
おもしろいんだというわけよね。
「見えることは想像力を阻害する」から、数値にしたとたん
他のものは見えなくなる。
書面で具体的にした瞬間、その人は「その人のように」しか
見えなくなる。
空白があったら、「空白のある人」にしか見えなくなる。
とはいえ、そういう社会をいますぐ変えることはできない。
そういう社会であることを踏まえた上で
戦略を考えることが必要だ。
そんなのは実は小手先のテクニックでいくらでも補える。
その先で評価されるために、爪をといでおくべきだね。