それぞれに困難

「幕末の志士はすごい、あんな若くして日本を動かしたんだから」
という人がよくいます。
果たして本当にそうだったのだろうか?
確かに、吉田松陰とか橋本左内などが残した手紙や文書には
これが20代前半の若者の言葉かと疑うほど、
志の高さがうかがえるものが多い。
それに成し遂げたことも大きい。
でも、今の若者と比べてポテンシャルが高い人が集中して
登場した時代だったかというと、ちょっと違う気がする。
当時の勉学は、読み書きそろばんで、
読みは論語を中心とした中国の書物を学んだ。
10代のうちはこれらを徹底的に反復して覚えたから、
論語を中心とした、今からすれば時代がかった表現で手紙などに
言葉を残したので、いかにも難しいことを論じているに思えるが、
言っている内容は天下国家のためであり、忠義のためにであり、
自分以外の誰かのためを思った発言であり、
特に難しいことを言っているわけではない。
彼らと比べて、現代の若者のほうがいろんなことを
勉強しなければならない。
読み書きそろばんは小学生のうちに終え、
中学生、高校生になった昔の数学者が見つけた公式を使って
問題を解かなければならないし、英語も覚える必要がある。
今の若者のほうが格段にやるべき勉強の量が多いのだ。
しかも幕末の志士がみんな若くして立派だったわけではない。
幕末の志士と自分を比較なんかしないほうがよい。
その時代時代に、それぞれの困難さがあるのだからね。