「どん底」の表現

お金に困って工事現場で働く。
年下に「何やってんだ!」と怒鳴られ、
クタクタになってやっとの思いで家にたどり着く。
ドラマや映画などでなんども繰り返されてきたシーンだ。
主人公が奮起する前段階の「どん底」を示すためには、
絶好の場面である。
このどん底の状況がつらいものであればこそ、
その後の飛躍が衝撃をもってとらえられ、
ヒロイズムがいっそう喚起される。
偉いね、苦労しているんだねって思うけど、
でも、工事現場でずっと働いている人もいるわけだよね。
そういう人たちはこういうのをどう見ているんだろう。
工事現場で働くことが「どん底」として表現されているのを、
少なくともいい気はしないと思う。
いっとき工事現場で働いた人より、
工事現場で何十年も働いている人のほうが大変だと思う。
なんの気なしに見ていると、つい見過ごしてしまうけれど、
よく考えると、そういう表現ってどうなのって思うことは多い。
目の前を流れる情報を一度、止まって考えてみるということを
たまにはやってみないといけないね。