理屈でなく、肌で感じて

ある水族館の館長に取材した。
彼は海というのはいいものだと思ってもらう、きっかけになるよう
これからも水族館を魅力あるものにしていきたいと言っていた。
私と同意見だったので、本当に胸のすく思いがした。
森林インストラクターの試験のときに、
森林内の野外活動についての勉強を課せられた。
なぜ、森林のことを学ぶのに、キャンプの技術やレクリエーションの
方法を学ばなければならないのか不思議だった。
しばらくして意味がわかった。
自然の中でたのしい思いをすることが、
環境を守る上で大切だからなのだ。
自然がいいものだという刷り込みが必要。
それには、自然の中で遊ぶことが大切だ。
山や川でたのしい思いをすれば、ああ、自然っていいものなんだな
というのを、理屈でなく肌で感じる。
そういう人が大人になって、いろんなところで仕事をするように
なれば、自然と環境を考えた働き方をするだろう。
それが不十分だったために、野山を削ってきたのだ。
子どものころに、自然っていいものだなという感覚が育たなかった人に、
里山を再評価しようといっても難しい。
芝生がいいものだと口で言っても、
「芝生の上で寝転んでいたら、ストレスが減るという科学的根拠を示せ」
と言ってくるのが、現代の都会人なのですからね!
経験してない人に口で言っても魅力を理解してもらうのは難しい。
残念ながら、そういう人たちのことは諦める。
でも、子どもたちの頭は柔らかいから、まだ大丈夫だ。
子どもたちには自然の中でたくさん遊んでもらいたい。
虫にさされるのは嫌かもしれないが、
それだって虫が生きるのには必要だということを、
理屈でなく、肌で感じてほしい。