思いを学べ

長野県の下條村という小さな村に全国から視察が殺到しているという。
なんでも出生率が2%に迫る勢いで、高齢化率も下げ止まり、
これから安定した社会が到来するからだというのだ。
やってる施策がおもしろい。
まず村の支出を減らすために、村民みずから道路をつくった。
生コンなどの資材費だけ村が出し、あとは村民が汗をかく。
次に下水道でなく、合併浄化槽を取り入れた。
中央からきたコンサルタントにそそのかされることなく、
膨大なお金のかかる下水道を整備しないことで、
村にお金を残したわけだ。
そうやって残したお金で若者向けの定住住宅を整備。
利用者の条件として、結婚している若い夫婦、これから結婚する若い人、
小さな子どもを育てている家庭に限定した。
国から下りてきたひもつきの補助金では、こうした独自の条件を
つけることはできないが、村は支出を減らして捻出したお金で
住宅をつくったので、こうしたことができた。
ただし、この状況が成立するには飯田市という中核都市が
近隣にあることが条件である。
若い夫婦のどちらかは飯田市に勤めているからだ。
この話は本になると企画してみたが、
飯田市のような都市がない地方行政区の参考にならないのでは?」
といわれた。これを言ったのは東京の人だ。
私はここに日本人の気質を見た気がした。
つまり、どこかの成功例を完全にマネれば、自分たちもなんとかなる
という考え方だ。
私たちが下條村の例から学ぶべきことは、そのスピリットだ。
不要なインフラを備えるのではなく、子育て世帯に投資する。
投資するだけではダメで、地域のコミュニティをつくること。
実際、下條村では村立の住宅に入る条件として、
「地域活動に参加すること」という条項がある。
最初はいやいやだったとしても、参加しているうちに子育てで
アドバイスをもらったり、ちょっと子どもを見てもらうこともできる。
お金を渡しただけでは、出生率が上がらないのは
諸外国の例を見ても明らか。
インフラよりも人を大事にする、表面的な便利さより
人とのつながりを大事にするという、スピリットを学び、
施策に生かすことだ。
それができる人を選挙で選ぶことだ。
具体策をそのまま取り入れようとしたってダメ。
思いを学び、じゃあ自分たちの地域では何ができるかを考えることだ。