『佐賀のがばいばあちゃん』

事務所に転がっていたのを読んでみた。
80年代に漫才で一世を風靡した漫才コンビB&B
島田洋七さんが書いた自伝的小説(?)らしい。
この本、いろんな出版社に持ち込んだのに、
話が地味として全然売れなかったのだが、
不況極まれり2000年代の後半に、突如として売れ出した。
その背景として、節約をしながらもたのしく、たくましく生きる
「がばいばあちゃん」(がばいは、すごいの意)の言葉が
小気味良かったからというのがあった。
読んでみて、その点も非常によかったのだが、
私がいいと思ったのは、母と離れて暮らす、あるいは貧乏で暮らす
子どもへの、周囲の温かなまなざしだった。
私はそこに古い日本人の美質を見る思いがするのだ。
自分だけよければいいという人が多い昨今、
苦しいときはお互い様という感覚は懐かしさを覚えると同時に、
何か、いま一番欠けているようにも思える。
それを取り戻そうとする試みはさまざまな場所で、様々な形で
行われている。
この本がこれだけ読まれたのも、まだ日本人はその精神を完全に
忘れ去ったわけではないのかもしれない。